こんにちは、久しぶりの更新です。
今日は Amazon から新しくリリースされた AWS Storage Gateway について触れたいと
思います。
もちろん、FOBAS CSC からすると、一部のユースケース(オンプレミスデータのクラ
ウドストレージへのバックアップ)では競合する存在になりうるのですが、機能を
紐解いて行くと弊社とは少し異なる Amazon の戦略・意図が垣間見えますのでその
辺りを中心にコメントしてみたいと思います。
■iSCSI インタフェースの採用
Cloud Storage Gateway 製品は大きく、ブロックデバイス(ファイルサーバ)として
機能する部類の製品と、キャラクタデバイス(ストレージハードウェア)として機能
する部類の製品に分かれます。FOBAS CSC は基本的に前者で、企業の中でファイル
サーバとして振る舞います。インタフェースで言えば、Windows のファイル共有
プロトコルとして有名な CIFS、UNIX の世界では昔から使われている NFS、FTP、
インターネットの世界でデファクトとなりつつある WebDAV などを提供しています。
それに対して、今回 Amazon が提供する AWS Storage Gateway は、キャラクタデバ
イスとしてのインタフェースである、iSCSI を提供しています。とはいえバックグラ
ウンドのストレージになる S3 や、プロキシされた実際のデータ格納場所である、
オンプレミス・ストレージでは、ブロック単位での入出力にならざるを得ないため、
その辺りのパフォーマンス・オーバヘッドが気になる所です。
■バックアップ用途フォーカス
AWS Storage Gateway は、ユースケースをオンプレミス・データストレージの Amazon
S3 へのバックアップ用途に絞って提供しています。既存のオンプレミス・データ
ストレージとコンピュータの間に配置して、オンプレミス・データストレージのプロ
キシとして機能します。コンピュータからオンプレミス・ストレージに書込みをする
データをキャプチャして、S3 にバックアップを取るという仕組みです。
これはユニークな試みです。既存ストレージ資産を生かしながら、そのデータのバック
アップを取得できますので、既存ストレージの災害対策として有効な手段となるでしょ
う。但し、コンピュータから見たインタフェースが、iSCSI に限定されますので、例え
ば、NAS の CIFS インタフェースを利用していた顧客にとっては、iSCSI から CIFS
に変換するための、Windows サーバが新たに一台必要になります。
FOBAS CSC も、内部キャッシュストレージとしてオンプレミス・データストレージの
利用をサポートする予定ですので、AWS Storage Gateway と同様に、ストレージプロ
キシとしての利用が可能になります。
■AWS EBS スナップショット形式での保存
ここが、おそらく Amazon の思惑が端的に表れている点だと思います。オンプレミスの
データストレージのイメージをそのまま、EBS スナップショットのイメージで S3 に
バックアップするという機能です。この機能の Amazon にとっての最大の狙いは、
企業は意識せずにオンプレミス・システムを Amazon EC2 に移行する下準備が出来
あがってしまう事にあります。将来的には、オンプレミスサーバの OS イメージを、
EBS ベースの Amazon EC2 イメージにレプリケートする機能が追加されるかもしれ
ませんね。
■ユーザとして注意すべき点
まず、純粋な Cloud Storage Gateway の視点からは、コストに注意すべきでしょう。
AWS Storage Gateway は、オンプレミス・ストレージのデータを暗号化はしますが、
圧縮や重複排除は行いません。従って、クラウドストレージ利用コストの圧縮効果は
ありません。
また、必要とされるリソースも比較的大きいものです。AWS Storage Gateway 用に
専用のサーバが一台必要になるでしょう。
最も注意すべき点は、ベンダロックインのリスクです。Amazon は現時点では間違い
なく、グローバルにおける IaaS のリーダです。機能、コスト、スケール全てに
おいて、大きなアドバンテージをもっています。但し、IT に限らず外部のリソース
を利用する場合、オルタナティブ(代替手段)を持てない事は大きなリスクです。
言うまでもなく、AWS Storage Gateway は、Amazon AWS 限定のツールであり、EC2
を中心とする AWS 全体サービスへの囲い込みを狙ったソリューションです。
ニフティ、IIJ などの国内プレイヤーの成熟と共に、Google、Microsoft、Oracle、
SAP、SFDC などのグローバルプレイヤーも続々とこの領域に、参戦しています。
そのような流れの中では、ベンダニュートラルなソリューションでロックインリスク
を排除する事こそが、長期的に求められる戦略だと考えます。
■まとめ
Amazon の AWS Storage Gateway は、Amazon S3 に特化した Cloud Storage Gateway
であり、主にオンプレミス・ストレージのバックアップにフォーカスしたソリューシ
ョンです。但し、背景にある大きな戦略は、単に クラウドストレージとしての S3
の利用を促進する、Cloud Storage Gateway ではなく、Enterprise ユーザが、EC2
を中心とする AWS 全体サービスへの移行を促進するためのブリッジの位置付けに
なっていると考えます。